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思い出色々

降り立つ
2001年 夏。
夜23時から翌朝8時まで定額でインターネットができるテレホーダイプランから
24時間使い放題のISDNプランになり、インターネットがいつでもできるようになった頃。
ある休日の昼過ぎ、いつものように通いのチャットルームへログインすると
管理人のM氏が待ち構えていて、面白いゲームをやっているんだ、と言いだした。
なんてやつ?
「ウルティマオンライン」
今までファミコンやメガドライブなどの家庭用ゲーム機でしか遊んだことがなかった。
今、目の前にあるパソコンでも遊べるゲームがあるのは理解していたが
それらに興味を持ったことはなかった。
「すごく面白いんだよ」
へーじゃあちょっと買ってくる。
詳しい話は一切聞かずに、近所の家電量販店へ自転車を飛ばして購入してきた。

どんなゲームでも、オープニングを見るときのワクワク感はたまらない。
たとえ洋物グラフィックのハゲたおっさんが水晶玉をもぞもぞいじくっているだけでも。
2Dと3Dという選択肢があった。迷わず3Dでログイン。私はブリタニアに降り立った。
「ブリテインて街に来て」と言われたが何をどう操作したらいいのかすらわからない。
現在地もわからない。
なにをどうしたか記憶にないほど四苦八苦してようやくそのブリテインへたどり着いたが
人通りもなく、呆然とたたずむ初心者。
だいぶ後になってわかったが、降り立った場所はブラックソン城の近くの厩舎前だった。
ワラが敷いてある小部屋がいっぱいある、という説明しかできない初心者。
こんな説明でよくわかったものだが、M氏がようやく迎えに来てくれた。
左下に英文メッセージと、どこかを指している矢印があったが、私は英語が読めなかった。
だいぶあとになって、これがyoung用のクエストだったことを知った。

近道
M氏から馬を買うように言われ、その厩舎へ入る。
guard / bank / vender buy
この3つを入れたマクロを、押しやすいところに入れるように言われた。
今のように、初心者に丁寧なチュートリアルなどなかったので
自分でネットで調べるか、先輩から教わるかしないと、物を買うことすらできなかった。
Mくんは何のキーに入れてるの?
「alt + z かな」
これが、初めて覚えたブリタニアで生きていくための「マクロ」という技。
今でもalt+zキーにはガードと銀行を呼び出すマクロを使っている。
NPCにvender buy。可愛かったのでなにか背中に背負っている小さい方を買う。
「それは荷ラマだ。乗れないよ」
もう一度vender buyして馬を買う。
これで最初に降り立ったときに持たされた小遣いはほとんどなくなったはずだが
そのときはまだ「オカネ」という概念を理解していなかった。
馬に乗り、M氏についていく。
荷ラマを連れて歩くためのコマンドも知らなかったし、厩舎の存在もまだ知らなかった。
M氏も特にそれを教えてくれるようなことはなかった。彼はそういう人だ。
降り立ったポイントから南へ歩く。
ブリテイン中央の宿屋の横を抜け、水道橋の脇にある細い道をすり抜ける。
「近道w」
これが二つ目に覚えたこと。

ヤング解除
街は人と文字であふれかえっていた。
トカゲ売りの行商、GHPだのGCPだのいう謎の品物を売る人物、武器や防具の売人。
どこぞで死んだと救助を求める声、救助隊兼討伐隊が結成される鬨の声。
戦利品のアイテムを地面へバラ撒く人、群がる人。
ただお喋りしている人、机を並べていく端から壊されていってケンカをする人。
買われていくトカゲを見て、自分もあのトカゲが欲しくなった。
あれ乗りたいとねだると、M氏が行商の人に声をかけ買ってきてくれたが
Youngタグの付いた私に受け渡しはできないようだった。
このタグが付いてると渡してもらえないの?
「まーヤング解除すれば渡せると思うよ」
どうやんの
「@ヤング解除」
私のヤング時代は終わった。

トレハン
トレハンてなに?
「来ればわかるよ」
M氏は何も説明してはくれない。彼はそういう人だ。
出された移動ゲートをくぐり、ちょっと大きな白い家に案内された。
数人の見知らぬプレイヤーが、レベルがどうのこうの、と話し合っている。
「初心者もいるし3から行こうか」
パーティの組み方を教わり、森へ連れ出される。
木陰で一人のプレイヤーがごそごそやり始める。
それぞれ剣を構えたり、魔法で姿を消す参加者。
意味もわからずぼんやり見ている私。
木陰でゴソゴソしていた辺りが突然ピカっと光る。
「うわぁああリッチだあああ」「逃げろ!」
誰かが叫んだ。蜘蛛の子を散らすようにみんな一斉に走り出した。
意味もわからず私も走った。ひたすら走り続けた。スタックヘルプで街へ帰った。
『どこいった?』とメッセージが来たが、パーティチャットのやり方は知らなかった。
パーティの抜け方も知らなかった。流れ続けるパーティチャットが悲しかった。
トレハンが「トレジャーハント(宝探し)」だということは、数ヶ月後に知った。
数年は「トレハン」という言葉が嫌いだった。


M氏は、当時かなり高価で貴重だった家を所持していた。
ヴェスパーの東の湖の畔に連れて行かれる。
地面にムーンストーンを埋めると、赤いゲートが現れた。
ゲートをくぐると、フェルッカ世界のまったく同じ場所だった。
石造りの小さな塔、スモールストーンタワーが彼の家だった。
当時、1件の家に置けるセキュアの数は決まっていた。
スモールストーンタワーのセキュア設置数は4つだっただろうか。
好きに使っていいよと、その数少ないセキュアを1つ、こころよく貸してくれた。
屋上に置かれた自分だけの空間が、嬉しかった。
始めたばかりの私は特に貴重なものは持っていなかったが
手持ちの小銭やよくわからない動物の骨などを詰め込んで喜んだ。
翌日行ったら私のセキュアは消えていた。ロックダウンされていなかった。


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